診療予約アプリとは|仕組み/基本機能/種類/費用比較
診療予約アプリとは、スマホ・タブレットにインストールすることで予約システムを使えるアプリのことです。従来の電話予約と違い、24時間オンライン上で自動受付が可能です。診療予約アプリを導入すると患者は好きなタイミングで予約でき、病院側は受付に関わる負担を軽減できます。
今回は診療予約システム・アプリの機能や導入のメリット・デメリット、現在のトレンドなどを紹介します。
診療予約アプリの基本機能
診療予約アプリには次のような基本機能があります。
<予約アプリでできること>
- ネット予約:24時間自動受付
- 顧客管理:個人情報や来院履歴などの一元管理
- 他サービスとの連携:キャッシュレス決済やSNSなどとの連携
- 自動メール配信:リマインドメールの送信
- 呼び出し機能:順番を伝えるスマホへの通知
診療予約システム/アプリの種類
診療予約システム・アプリには、順番制・時間制・時間帯制の3つがあります。
<順番制>
順番制は来院順に予約を受け付けるタイプです。基本的に番号が早い順に診察をするため、一人当たりの所要時間が長いと他の患者を待たせてしまうかもしれません。皮膚科や耳鼻科など、診察時間が比較的短い科目に適しています。
<時間制>
時間制は「〇月〇日の△時」と予約日時を指定するタイプです。時間になっても呼ばれないと患者は不満に思う可能性があるため、診察時間に差が出にくい科目に適しています。
<時間帯制>
時間帯制は順番制と時間制が複合したもので、「〇時~〇時に△人受付」と枠を指定し、来院順に診察をしていくタイプです。予約時間に幅があるため、診察時間が読みにくい、または患者によって差がある科目に向いています。
診療予約システムの中には、予約種別を変更できるものもあります。作業効率や患者の満足度向上のため、自院に適した種別を選択しましょう。
病院/クリニックおすすめ予約アプリ – 初期/月額費用/機能比較5選
一口に診療予約システム・アプリと言っても、料金相場はさまざまです。月額費用が5,000~1万円、月額・初期費用は0円で3~6%の手数料のみといったサービスもあります。
以下は、病院・クリニックにおすすめの予約アプリ・システム一覧表です。
アプリ/システム名 | 初期費用 | 月額費用 | QRコード発券 | LINE連携 | モニター接続 |
Air Wait | 0円 ※無料 | フリー:0円 ※無料 ベーシック:11,000円 スタンダード:22,000円 | 〇 | 〇 | 〇 |
EPARK | 問い合わせ | 問い合わせ | 問い合わせ | 〇 | 〇 |
My junban | 0円 ※無料 | トライアル:0円 ※30日無料 有料プラン:5,980円 | 〇 | 〇 | 〇 |
matoca | 問い合わせ | 問い合わせ | 〇 | 〇 | 〇 |
ネコの目システム | 問い合わせ | 問い合わせ | 〇 | 〇 | 〇 |
診療予約アプリの3つの主要機能
病院・クリニック向けの診療予約システムには、ネット予約・LINE連携・キャッシュレス決済連携といった機能があります。ここでは各機能を紹介します。
1. ネット予約
診療予約アプリを導入すると、予約・キャンセル受付が自動化されます。電話や対面と違い、患者の好きなタイミングで受付が可能です。
また、診察当日はスマホで診療状況の確認が可能となるため、患者の利便性も向上します。
2. LINE連携機能
LINE連携機能が備わっているアプリであれば、LINE上で予約受付が可能です。リマインドや診察の呼び出しといった各種通知も送れるので、患者の来院忘れ防止に役立ちます。
その他、QRコードの読み込みで友だち登録されるため、来院のきっかけづくりにもなるでしょう。
3. キャッシュレス決済連携機能
クレジットカードや電子マネー、QRコードなど、各種キャッシュレス決済と連携できる診療予約アプリも数多く登場しています。クレジットカード情報を事前に登録していれば、患者はスマホのみで決済可能です。患者の利便性向上に加え、会計業務の簡素化によりスタッフの負担を軽減できます。
事前決済に対応しているアプリであれば予約時に支払いを確定するため、キャンセル防止に役立ちます。
病院/クリニックが抱える課題と導入メリット
診療予約アプリは、多くの病院・クリニックが抱える「待ち時間」「コロナ感染のリスク」「予約の波」といった課題の解決に役立ちます。ここでは診療予約アプリが解決に導く課題と、導入メリットを紹介します。
待ち時間 – 患者が抱える不満の第一位の解消
過去に株式会社メディネットが行った調査を見てみると、外来患者が抱える不満トップ10の1位は「診察待ち時間(22.2%)」でした。
次に、診察待ち時間に対する不満を見てみましょう。
- 10分未満:3.7%
- 10~20分:6.0%
- 20~30分:11.7%
- 30~40分:19.5%
このように、40分を超えると不満度は一気に上がっています。
診療予約アプリを導入すると、患者は手元のスマホで診察・待ち状況を確認できます。順番が近くなるとアプリから通知が送られるため、それまでの待ち時間の有効活用ができます。待ち時間に対する不満が軽減されることで、顧客満足度の向上とクレームの減少が期待できるでしょう。
コロナ感染 – 約7割が不安に感じる密集の解消
2020年7月、⽇本医師会は「第7回 日本の医療に関する意識調査」を行いました。その中の「医療機関の待合室などで感染症に感染する不安」という項目では、33.2%が「不安」と、36.1%が「やや不安」と回答しており、実に7割近くの人が待合室で不安を抱いていることが分かっています。感染への不安は、受診控えの要因になっている模様です。
診療予約システム・アプリがあれば、患者は待機する場所を自由に選択できます。密集の解消は感染予防につながるため、受診を控えていた患者が来院するかもしれません。
予約の波 – 曜日/時間帯によって異なる患者数の平均化
病院・クリニックは、時間帯や曜日によって患者数のムラが生じることもあるでしょう。患者の不満や、医師・スタッフにかかる負担が蓄積するのは避けたいところです。
予約アプリ・システムを導入すると、予約画面に予約・混雑状況が表示されるため、患者は日にち・時間帯ごとの空き状況を確認できます。混雑していない日にち・時間帯を選択する患者が増えることで、来院する患者数が自然と平均化されるでしょう。
診療予約アプリ導入のデメリット/注意点
紹介してきたように、診療予約アプリにはさまざまなメリットがありますが、その一方で知っておきたいデメリットも存在します。ここでは費用・患者の操作性・クレームの発生・キャンセル時の対応と、4点紹介します。
初期/月額費用が発生するアプリもある
診療予約アプリは無料で使えるものもありますが、使える機能が制限されていることが多いです。基本的に、病院・クリニックの規模が大きくなるほど必要な機能が増え、費用が発生する可能性が高まります。
導入を検討する際は見積もりを依頼する、資料を取り寄せるなど、複数のアプリを比較検討しましょう。まずは無料版を使ってみて、使いやすさを確認してみる方法もあります。
患者の中にはスマホ/タブレットの操作が苦手な人もいる
病院・クリニックの患者の中には、スマホやタブレットの操作に不慣れな人も存在します。
特に、高齢者が多い施設ではその傾向が顕著かもしれません。そのような医院が診療予約アプリを導入すると、ネット予約に不慣れな人が操作に困ることが考えられます。
また、なかには端末を所有していない人もいるでしょう。診療予約アプリの導入が受診控えにつながらないよう、電話予約も並行する、使い方を教えるなどの対応をおすすめします。
時間通りに呼ばれないことでクレームが発生する恐れがある
予約の種類が時間制または時間帯制の場合、時間通りに呼ばれないと患者によっては不満を抱えることがあります。なかなか自分の番号がこないことで、受付へのクレームが発生することもあるでしょう。
対処法としては、予約可能な人数を無理のない範囲に設定する方法があります。例えば時間制の場合は15分刻みから30分刻みにする、時間帯制の場合は1時間に7人のところを5人にするなど、少し余裕を持たせると大幅な狂いが生じにくくなります。
キャンセル時の対応に手間/負担がかかることもある
診療予約システム・アプリは、患者自身がネット上で予約をキャンセル可能です。患者からすると便利な機能ですが、病院側には手間や負担がかかることもあります。
なぜならば、ネット上でキャンセルされると患者の状況が分からないからです。単純に忙しくてキャンセルした場合と、動けないほど具合が悪くキャンセルした場合では緊急度が異なります。
状況によっては早急な診察が必要になるため、キャンセルした患者によっては予約を変更する必要性の確認なども含め、病院側から電話連絡をする必要があります。
診療予約システム/アプリ│市場規模/注目される背景/トレンド
診療予約システム・アプリは導入が加速しており、市場規模が拡大していくと予想されています。ここでは診療予約システム・アプリの市場規模と普及率、導入時に活用できる補助金制度、トレンドのLINE連携について紹介します。
拡大する市場規模 – 2023年度の国内医療ICT市場規模は1.28倍の予想
2022年7月に株式会社矢野経済研究所が発表した調査結果では、2023年度の国内医療ICT市場規模(事業者売上高ベース)が、2021年度比1.28倍の211億4,000万円になると予測されています。
診療予約システムは3密(密閉・密集・密接)回避に役立つことから、新型コロナウイルス感染症の蔓延以降、市場拡大が顕著のようです。
高い普及率 – 新規開業クリニックの6割以上が導入済み
同じく株式会社矢野経済研究所が2019年に行った「新規開業クリニックに関する法人アンケート調査」では、予約システムの導入率は62%と発表されています。半数以上が導入済みという結果から、注目度の高さがうかがえるでしょう。
IT導入補助金 – 制度の拡大、対象額は最大2年分まで引き上げ
診療予約システムの導入には「IT導入補助金2022」が利用できます。今年度「デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)」に名称が変更され、サービス利用料の対象額は最大1年分から2年分まで引き上げられるなど、補助の範囲が広がりました。
<対象になるもの>
- 予約システム
- 電子カルテ
- POSレジ本体機器
- POSレジ周辺機器
- バーコードリーダー
- Wi-Fiルーター
- 配送設置費
- クラウド利用料 など
制度について、詳しくは公式ホームページをご確認ください。
SNS No.1 – 国内月間アクティブユーザー1位のLINEユーザーを顧客化
LINEは月次アクティブユーザーが約9,200万人と、国内では最も利用ユーザーが多いSNSです。LINE連携予約アプリ・システムの導入で、多くのユーザーの顧客化に期待できます。
ここで、LINE連携予約システムを導入している病院の事例を見てみましょう。
『西馬込あくつ耳鼻咽喉科』は、診療予約システムの導入によって行列待ちの解消に成功しています。
また、休診や季節の情報などをLINEで発信し、患者とコミュニケーションを図っています。同医院の登録者数は7,700人オーバーと多く、現在も増え続けているそうです。
こちらの医院の事例を見ると、LINEの活用次第で患者数の増加に期待できることが分かるのではないでしょうか。
クリニック・サロン対応予約システム比較
診療予約アプリは来院患者の増加/業務の効率化に期待できる
病院・クリニックのネット予約を実現する、診療予約アプリ。患者側は24時間好きなタイミングで予約でき、施設側は受付に関わるスタッフにかかる負担を軽減できるなど、双方にさまざまなメリットがあります。
また、待合室の密が解消されれば、感染リスクを恐れて受診を控えていた患者が来院するかもしれません。業務効率や顧客満足度の向上のため、そして来院患者の増加を期待して、診療予約アプリを導入してはいかがでしょうか。